那覇に路面電車(LRT)が復活!3つの有力ルートを比較する
那覇市に路面電車。と言っても戦前に走っていた沖縄電気軌道の路面電車ではありません。新しくLRTを走らせる計画が持ちあがっているのです。
沖縄本島縦貫鉄道のフィーダー交通として、那覇市民の足として活用できる路面電車計画がどのようなものなのか。
また構想段階にある3つの案の中で最有力候補は?絞り込まれた3案を比較します。
那覇市内には路面電車が走っていた
太平洋戦争以前には沖縄に鉄道が走っていたというのは皆さんご存知だと思います。
しかしほとんどの方が思っているのは軽便鉄道と呼ばれる普通鉄道よりは少し規格が小さめな鉄道の事ではないでしょうか。
確かに沖縄本島には、【嘉手納線】、【与那原線】、【糸満線】などの軽便鉄道が走っていました。他にも大東島などでサトウキビを運搬するためのシュガートレインや馬に車両を引かせる馬車軌道などもありました。
しかし那覇市内を走る電気軌道の路面電車が走っていたことを知る人は少ないのではないでしょうか。
今の那覇港ターミナルのある通堂から若狭、泊を経由して崇元寺、坂下、首里までを結ぶ「路面電車」が走っていいたのでした。
那覇港ターミナルの「通堂」という地名は今はラーメン屋さんのイメージでしか知らない人も多いでしょうね。
昭和8年には路線バスの普及によって経営難に追い込まれ廃業した沖縄電気軌道。
このバスによって路面電車が消えゆく流れ、当時は全国各地で見られた現象でしたので時代の流れだったのでしょうね。
他の軽便鉄道の終焉などと違うのは、戦争で破壊されて終わりを迎えたのではなく、バスに負けてしまったからというのが悲しいところです。
しかし時代はながれ、今また那覇市内に路面電車を復活させる計画があるというのです。
今では自動車の普及により道路渋滞が激しくなり、また逆にバスに代わって定時・低速性と大量輸送性の確保が出来る鉄道やLRTが求められるようになってきたというのも皮肉なものですね。
それでは今回、那覇市内に計画されている路面電車の有力ルートを検証してみましょう。
3つの那覇市LRT新ルート案を比較
絞られた有力ルート案は3つ
- 南部医療センタールート(素案1)
- 若狭~真玉橋ルート(素案2)
- 真和志~新都心ルート(素案3)
の3つになります。(ルート名は便宜上、当サイトでの仮名です)


ルート | 概算事業費 | 概略需要 | 単年度収支 |
---|---|---|---|
素案① | 322億円 | 9600人/日 | 1600万円 |
素案② | 323億円 | 1万1300人 /日 | 1億900万円 |
素案③ | 529億円 | 1万3700人 /日 | 7800万円 |
それぞれのルートでの事業費・需要・収支なども既に出されていましたので、ルートに合わせて比較してみます。
おおまかなルートの公表ですので、本稿で記載する詳細な地名や通り名と実際のルートとは異なる場合もありますので、ご理解ください。
案1:南部医療センタールート
バスターミナルから県庁南口~開南~寄宮~識名トンネルを通過して県立南部医療センターを結ぶルートです。
旭橋駅はモノレールやバス路線との乗り換えに便利ですね。
沖縄本島縦貫鉄道の那覇駅もここに設定されるのなら【沖縄本線】のフィーダー交通の結束点としての活用も広がります。
他の3案との違いは、寄宮から医療センターまでですが、ここはほとんどトンネルですので、病院の利用客のみの利用になるかと思われます。
その為でしょうか。収支予想は3つの中で最も低く設定されています。
あまり現実味が感じられません。
ただ南部医療センターの先に、現状では計画が中断している与那原バイパスなどと絡めての考えがあるのならば、いずれは南風原・与那原・西原などへの延長も含めて、ありえないルートではないですね。
案2:若狭~真玉橋ルート
海外から多くのお客様を出迎える那覇クルーズターミナル・若狭バース。
ココを起点として県庁北口~県庁南口~開南 ~寄宮~ 真玉橋を結ぶルートです。
若狭~県庁前の利用はほとんど外国人の利用になるかと思われます。
大型クルーズ船で訪れた乗客の国際通りまで足を運ぶ手段が今はありませんからね。
沖縄県の進める「東洋のカリブ構想」が実現すれば、今後ますます需要は高まる事でしょう。
県庁から真玉橋までは開南や与儀、寄宮の市民や沖縄大学などの学生の利用が見込めるのではないでしょうか。
しかし真玉橋を終点に設定している意味は他にあると思われます。
今後、このLRTの延伸を考えた場合、真玉橋からなら、豊見城・糸満ルート、南風原・与那原・南城ルートなども考えられるのではないでしょうか。
もちろん他の行政との連携も必要になりますが、かなり現実的なルートだと考えます。
事業費も3案の中で比較的低く、収支予想は最高値に設定されています。
案3:真和志~新都心ルート
バスターミナルから県庁南口~開南~寄宮~ 真和志大通り~喜多大通り~大道~真嘉比~おもろまち駅前~新都心内中環状線~上乃屋の国道58号線までの最も長大路線となります。
おもに真和志地区の住民の利便性と新都心内交通を考えたルートとなっています。
しかし、ルート内の真和志大通りや喜多大通りの幅員が狭すぎます。もしかして別のルートか?とも考えたのですがこの区間に別の大きな道も見当たりませんのでこの通りで間違いないでしょう。
この2つの通りを通過する為には道路の拡幅が必要かと思われるのですが、そのための最高値の事業費設定でしょうか。
しかし需要予測が最高値の割には、収支予想が低すぎるのが気になります。
やはり住宅地内のルートのため、短距離での利用が多くなるためでしょうか。
このルートでは、ほぼ地域住民の隣り駅までの利用といった感じですかね
バスターミナルから新都心にはモノレールが早くて便利でしょうから、真和志地区と新都心地区まで全線利用といったイメージではなさそうです。
3つのルート案で実現性の高いのは?
さて以上の【那覇市内路面電車】の計画3案を比較してみましたが、どちらの案で話が進んでいくのでしょうか。
具体的にはこれからの市の有識者の会議で決定されていくのでしょうが、私の予想としては、
2案の【若狭~真玉橋ルート】
になると予想します。
事業費や収支予想を見ても、今後の延伸を考えても、このルートが現実的ではないでしょうか。
那覇市内と南風原町や豊見城市との連携、東洋のカリブ構想での外国人旅行者の増加などと関連付ければ収支予想は更に増加する事でしょう。
この那覇市内の路面電車、まだまだ計画段階で完成がいつになるのかは分かりませんが、どのルートに落ち着いても約1世紀の時を経て蘇る【那覇路面電車】。
今から楽しみで、待ち遠しいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。